2024-06-10
買物DX:ルーフィ 「マルクト」でネットスーパー参入支援 情報・物流システム提供
ネット通販にもさまざまなジャンルがある中、ネットスーバーの特徴は生鮮3品や出来たての惣菜をはじめ、日常使いの商品を扱うことにある。これらの商品の性質もあって、出荷拠点からの配送エリアは他のネット通販に比べると狭い。店舗から出荷する場合はもちろん、センター出荷型でも何県もまたいで広域化できるわけではない。ただ、配送エリアは狭くても、講入頻度が高いので、十分なポテンシャルを秘めた市場と考えられている。
ネットスーバーカ点ごとに仕組みを必要とする点は、リアル店舗の商売に似ている。しかしリアルと異なり店舗があれは営業できるわけではなく、情報システムや配送システムを構築する必要がある。そのための投資は結局、大手チェーンでなけれは難しい。
配送サービスを事業とするルーフィは、ネットスーバーのネックである情報と配送のシステムを提供して、参入のハードルを下ける。同社が運営する「御用聞きモールマルクト」(以下マルクト)は、食品スーバー(SM)とドラッグストア(DgS)を核に、近隣のさまざまな業が参加してネットスーバーのEC(電子商取引)モールを形成する。
一般的なECモールとの違いは、2~3kmと限られた商圏設定で最短5時間・一日4便の配送体制を取るところにある。この商圏・配送体制は、ネットスーバーのサービスそのものだ。また、ネットスーバーでの講入は1店舗ごとに行うのが通常だが、「マルクト」の利用客は複数店舗の商品をネットで一括講入できる。注文後、配送車が店舗を回って集荷して、まとめて配達する。
これが可能なのは、ルーフィにはB2Bの分野で3温度帯対応のスポット配送をビジネスとしてきた基盤があるからだ。さらにネットスーバーの委託配送も150店規模で行っており、業務のノウハウを蓄積している。既存事業で培った物流と情報システムを自社のECモール事業に発展させた。
21年6月にスタートした1号事例は、ピーコックストア石川台店(東京都大田区)をはじめDgS、べーカリーショップ、バンケーキ専門店、和菓子屋の5店(22年1月現在)で地域商店のECモールを構築している。
渡辺泰章社長は「かなりの規模の小売業でないと、オンライン販売のインフラを用意するのは難しい。無理のない範囲で取り組めて、しかもモールで一括講入できるので相互送客も見込める。地域の店が時代に対応して新しい販路を得ることは、その地域の活性化にもつながるはず」と語る。
石川台エリアでは、1回の注文当たり3000円以上の講入で配送料を無料とし、講入金額の1%分を独自ポイントで還元する。情報システムと配送システムの双方を手掛けるため、どちらか一方よりも収益を得る機会が多岐にわたる。それにより他のネットスーバーに比べ踏み込んだ還元策も可能という。
2月には、池袋エリアでの営業も始まる。都内に限らず全国の主要都市を対象に、年内に5工リアでのサービス展開を目指している。
自前の仕組みを構築できないSMがオンライン販売に乗り出す場合、楽天やAmazonのようなECモールに出店するか、即時配送のフードデリバリーを導入するかが従来の選択肢だった。
それぞれの特徴は、前述のようにネットスーパーのサービス内容とは異なる。「マルクト」が提供する選択肢は、ネットスーバーの配送体制を備えた地域限定のECモールである点が新しい。(宮川耕平)Copyright©新日本食糧新聞社